疼痛領域における感作(sensitization)とは、侵害受容ニューロンの感受性や反応性が亢進した状態を指す神経生理学的用語であり、通常、閾値以下の入力に対して反応する状態や正常な入力に対する過剰反応(痛みの増強や受容野の拡大)が含まれます。病態に関わるのが、末梢の侵害受容ニューロンであれば末梢感作(peripheral sensitization)、中枢神経系であれば中枢感作(central sensitization)と呼ばれ、内因性疼痛調節機構の機能異常による反応性亢進も、後者に含まれます。最近では、QSTを用いたヒトの研究において“pain sensitization”という用語が使われることも多く、これには明確な定義がされていませんが、“sensitization of peripheral and central pain mechanisms”’を簡略したものと思われます。日本では、“pain sensitization”を直訳した「疼痛感作」という用語が使われていますが、実際にみているものはQSTで検出可能な“pain hypersensitivity” であり、痛みに関わる感覚神経の機能的変化と捉えられます。

線維筋痛症、顎関節症、過敏性腸症候群、頭痛、変形性関節症などの代表的な慢性痛患者において、何らかの刺激に対する痛み感受性をQSTで調べた研究は、1990年頃から報告されていました。2006年にドイツの神経障害性疼痛の研究グループ(DFNS)が、温度刺激や機械刺激による13種類のテストバッテリーを組み合わせた包括的なQSTプロトコールを提唱しました(Rolke R, 2006)。彼らは健常者のデータを基に各パラメーターの標準値を設定し、そこから患者のデータの異常度スコアを算出して、感覚神経の機能変化(減弱または亢進)を評価する方法を確立しました。2010年にArendt-Nielsenら(Arendt-Nielsen L, 2010)は、痛み強度の異なる変形性膝関節症患者と健常者を対象にスタティック、ダイナミックQST(後述)を組み合わせたプロトコールで評価を行い、得られたデータが患者の膝痛の強さと関係していることを明らかにしました。これら2つの研究はQSTの仕組みを理解する上で重要であり、以降の研究においても同様のプロトコールが多く用いられています。

QSTには大きくわけて2つのモダリティがあり、スタティック QSTおよびダイナミック QSTとよばれます。スタティックQSTは、標準化された刺激に対する反応性を評価する検査で、最も基本的な手法です。刺激方法としては、機械刺激や温度刺激,電流刺激などが用いられ、刺激が痛みに変わる瞬間の閾値を調べる方法が一般的です。圧迫刺激が痛みに変わる瞬間の圧力値は圧痛閾値(pressure pain threshold: PPT)とよばれ、最も頻用されているスタティックQSTのひとつです(図3)。ダイナミックQST(図4)は中枢性疼痛調節系の機能変化を反映する評価であり、スタティック QSTよりもやや煩雑な手法を要します。連続的な痛み刺激によって痛みが経時的に増悪する現象をみる時間的荷重(Temporal summation of pain:TS、図5)と遠隔部位に与えた痛み刺激が評価部位の痛み感受性を抑制させる条件刺激性疼痛調節(Conditioned pain modulation:CPM、図6)が代表的な検査です。前者は上行性疼痛促通系の反応亢進を,後者は下行性疼痛調節系の機能低下を評価できるとされています(図6)。QuantiPainを用いたQSTでは、一定のトレーニングを受ければ、これら全ての評価が誰でも簡単に可能となります。


図3.圧痛閾値(PPT)の測定


図4. ダイナミックQST


図5.時間的加重(TS)の測定


図6.条件刺激性疼痛調節(CPM)の測定

<参考文献>
Arendt-Nielsen L, Morlion B, Perrot S, et al. Assessment and manifestation of central sensitisation across different chronic pain conditions. Eur J Pain 22:216-241. 2018.

Rolke R, Baron R, Maier C, et al. Quantitative sensory testing in the German Research Network on Neuropathic Pain (DFNS): standardized protocol and reference values. Pain 123:231-243. 2006.

Arendt-Nielsen L, Nie H, Laursen MB, et al. Sensitization in patients with painful knee osteoarthritis. Pain 149:573-581. 2010.

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